前回の話

 90 :第4部 01 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:31:36 
例年よりも長く続いた梅雨が明け、また暑い夏がやってきた。 
俺とNは、一線を越えた後もそれまでと同じように付き合うことが出来た。 

Yとは体で結ばれても、俺の心がYの方を向いていなかった。
だからうまくいかなかった。 
ゆえにNとの関係がこれまで通りであった(あるいはそれ以上に近しくなった)ことは、
嬉しかった。 
文字通り「身も心も結ばれた」と、俺は思っていた。 

Nは大学受験を控えていたため、四六時中一緒にいるということはなかったが、
たまに気分転換と称してデートしたり、身体を重ねたりすることで、
俺はYの事を忘れる…とはいかないまでも、気にしないようになった。 



91 :第4部 02 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:32:17 
件名:Happy Birthday!! 
本文:誕生日おめでとー☆これからもよろしく! 

Nからメールが届いた。 
(Nらしいな、日付が変わる瞬間を狙ってメールしてくるなんて) 
俺はすぐに返信のメールを送った。 

俺[Thanx。18歳かー。年取ったなー] 
N[それはとっくに18になってる私へのあてつけですかコラ(^^#)] 
俺[……。…そんなことより、今日ついでに買い物したいんだけど、いい?] 

今日は彼女と会う予定だった。 



92 :第4部 03 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:33:13
N[OK。じゃあ、ちょっと時間早めにしよっか。3時でいい?] 
俺[おう。それじゃ、おやすみー] 
N[おやすみー] 

読みかけの文庫本にしおりを挟み、枕元にあるスタンドの明かりを落とした。 
真っ暗な部屋の中。夕方になって降りはじめた雨の音が、しとしとと響いていた。 

ベッドに入ると、すぐに眠気が襲ってきた。意識が夢と現実の間をゆらゆらと
泳いでいたその時… 

『*********!!』 

携帯が鳴った。メールだ。 


93 :第4部 04 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:34:00 
突然の電子音に少し驚き、悪態をつきながら眼鏡をかけ、携帯を手に取った。 
眠気が一気に吹き飛んだ。 

件名:(No Title) 
本文:ひさしぶり。誕生日おめでとう。 ――Y 

知らないアドレスからのそのメール、送り主は…Yだった。 

俺は混乱した。 
なんで突然メールを…? 
なんで俺のアドレスを…? 
これは返信したほうがいいのか…それとも、そのまま放置するほうがいいのか…? 
確かにあのとき別れたよな…? 
子供もできなかったし、あんなひどい別れ方をした俺に固執する理由もないよな…? 



94 :第4部 05 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:34:31
いろいろと悩んだ結果、とりあえず保留することにした。 
その場は“もう寝てた”ことにすればいい。そして、明日Nに相談しよう…。 

Nには極力、迷惑や心配をかけたくなかった。 
…しかしながら、俺ひとりではもうどうしようもないと思った。 
今までの俺の対処法は、どうやら裏目にでている。
現にYはこうしてメールを送ってきた。 

明日Nに全てを話そう。俺の罪を知って、Nが俺のことを嫌いになっても…
辛いけど、仕方の無いことだ。 

そう決意し、眠ろうとした。 
雨のおかげで部屋の中は涼しかったが、なかなか眠ることはできなかった…。 


96 :第4部 06 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:40:18
「おにーちゃん…?もう昼だよ。今日はデートでしょ…?」 

ドアを少しだけ開けて、妹が顔を覗かせていた。時計を見ると、もう12時を回っていた。 

俺「…ん。目覚しかけるの忘れた…。サンキュ」 
妹「ごはんできてるよ」 

結局、昨夜は何時くらいに眠りについたのだろう…?昼まで寝ていたというのに、
まだ眠かった。 



97 :第4部 07 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:41:15
シャワーを浴びて食卓につくと、母が話しかけてきた。 

母「あんた、今日のデート終わったらNちゃん連れてきなさい」 
俺「…はぁ?」 
母「Nちゃんにも一緒にケーキ食べてもらったら?」 

初めてNをうちに連れてきて以来、家族はNに好意的だった。 
両親ともNのことをえらく気に入っているし、妹とは時々メールをするような仲だった。 
今日がデートの日だということも、N→妹→家族 という流れで伝わっていたようだ。 

「…んー…わかった……」 

昨夜の決意もあって、俺は気の抜けた返事しか返せなかった。 



99 :第4部 08 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:43:45 
電車にのっている間はずっと、嫌な未来の想像ばかりが膨らんだ。 

汐入駅で電車を降り、待ち合わせの場所へ向かった。20分前だというのに、
Nはすでに着いていた。 
俺と目が合うと、彼女はにこっと笑って小走りで寄ってきた。 
その様子を見て思った。 

(…やっぱり…失いたくない) 

考えてみれば、なにもNに話す必要はないじゃないか。 
これは俺とYの問題だ。俺自身で解決するべき問題なんだ。 
そうだ「夜に書いた手紙は朝に見直せ」というやつだ。
きっとあの時は気が動転して、正しい選択ができなかったんだ。 

…そう自分に言い聞かせた。結局、俺の決意は崩れた。 


100 :第4部 09 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:44:30 
欲しかったCDを買って、映画を見た。 
ふたりのお気に入りのアイスクレープを食べているとき、母に言われたことを
思い出して彼女にきいてみた。 

俺「…あのさ、これからうち来ない?」 
N「え?いいの?」 
俺「うん。なんか張りきってケーキ作っちゃってるみたい」 
N「いくいくーw」 

母に電話し、自宅へと向かった。 
ここへ来るときと同じ電車だったが、今度は明るい未来ばかりを想像していた。 
やっぱり言わなくてよかった。 

101 :第4部 10 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:45:11 
1階からはまだ、母の電話する声が聞こえていた。 
みんなでご馳走を囲んでパーティーをしたあと、Nは家に電話し、
今夜はうちに泊るということを伝えた。 
そしてそのまま母に代わり、かれこれ30分近くNの母親と長話をしていたのだ。 

隣では、Nと妹がゲームで盛り上がっていた。俺はベッドに横になって、
その様子を眺めていた。 

昨夜届いたYからのメールの事が少し気にかかっていた。 

改めて考え直してみても不可解だった。どういった経路で俺のアドレスが
伝わったのだろう。 
部活?…いや、Yの学校には弓道部はないからそれはありえない。 
Yに会うのが気まずくて学園祭には行かなかったから、△△付属女子高校に
知り合いはいないし…。 
同じ付属高ということで何度かあった合コンの誘いも、全て断ったし…。 

そんなことを考えていたら、唐突にNが切り出した。 



105 :第4部 11 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:54:20 
N「そうそう。Yからメールきたでしょ?」 
俺「え…!?来たけど、なんで知ってんの!!?」 
N「こないだ偶然会ってさー…」 

彼女の話によると、こうだ。 
Yとは地元で偶然会った。少し話をしているうちに、俺の話になった。 
もともと俺がYと付き合っていたこともあって気まずいとは思ったが、
今現在俺と付き合っていると言う事を話した。 
でも彼女はそのことを知っていて、笑顔で「私は気にしないよ」と言った。 
その後、『そういえばもうすぐ誕生日だね』という話しになって… 

N「…そしたらYが『お祝いのメール送りたい』ってアドレスきいてきたから、教えた」 
俺「そっか…」 

106 :第4部 12 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:55:32 
N「で、ちゃんと返事したの?」 
俺「…いや、まだ。届いたとき寝ちゃってて、タイミング逃した」 
N「はぁ!?じゃあ、今すぐ返事しなよ!」 

俺は迷った。妹はニコニコしながら俺とNのやりとりを見ていた。 

俺「…でも、なんか、気まずくね…?」 
N「何が。Yはもう気にしてないみたいだし、またフツーの友達に
戻りたいんじゃないの?」 
俺「…そういうもんかなー…」 

それでも渋る俺を見て、Nと妹は「サイテーねーw」と声を合わせ、
ゲームを再開した。 

友達として…か。そういうものなのかな。だとしたら、俺って最低だな…。 


107 :第4部 13 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:56:56 
俺「…よし、送った」 
N「うむ」 

[返事遅くなってごめん。ありがとう。突然でビックリしたけど、うれしかったよ。] 
当たり障りの無いメールを送った。 

その時、お風呂の準備ができたという母の声が聞こえた。 
Nは妹に「一緒にはいろっか?」といい、ふたりで降りて行った。
部屋には俺ひとりが残された。 

『**************!!!』 

突然、携帯電話が鳴った。…メールじゃない、電話だ。 
背面液晶には、知らない番号が表示されていた。 

俺の嫌な予感は的中した。電話は、Yからだった。 

108 :第4部 14 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:57:31 
俺「…もしもし」 
Y「…あの…私…」 
俺「…おう。えと、ひさしぶり」 
Y「…うん、ひさしぶり。…ごめんね、突然電話して」 
俺「…いや、いいよ」 
Y「…」 
俺「…」 

電話の向こうのYは、相変わらずだった。俺は沈黙に耐えかねて口を開いた。 

俺「あの…元気してた…?」 
Y「…うん」 
俺「…」 
Y「…」 

また話題が途切れた。 

109 :第4部 15 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:58:16
俺「あのさ…ホント、ごめん、あんな最悪な別れ方して…」 
Y「…ううん。いいの。最後に好きって言ってもらえたから…」 
俺「(…?)…そっか。あの、ごめんな。…えと、俺、今、Nと、
その…付き合ってるんだ」 
Y「…うん。知ってる。でも、大丈夫。私は気にしないよ」 
俺「…ありがとう」 

なんだかいまいち反応が薄い気がしたが、とにかく言うだけのことは言った。
そう思ったとき… 

Y「…あのね、私まだ○○のことが忘れられなくて…いまでも…好きなの…」 
俺「…は?…いや、だから、おれはNと付き合ってるって…」 
私「 私 は 気 に し な い か ら っ !! 」 

これまで聞いたことのない、Yの大きな声に、俺はひるんだ。 

110 :第4部 16 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 21:59:20
Y「私は…気にしないから…また、付き合って…欲しい…」 
俺「(…え!?『気にしない』って、そういう意味!?)いや、あの、だから俺は…」 
Y「…お願い…」 

電話の向こうで、Yは泣いているようだった。 
俺の中を恐怖が駆け巡った。これは…この流れはマズい…!! 

その時、風呂からあがったNと妹が、楽しそうにおしゃべりしながら階段を
上ってくるのが聞こえた。 

「ご、ごめん!えと、あの、ごめん!」 

パニックになって、慌てて電話を切った。そして、携帯電話の電源を落とした。 


112 :第4部 17 ◆SOkleJ9WDA :2006/06/22(木) 22:00:21 
N「お風呂お先~w」 
妹「おにーちゃん、ちゃんとメールしたー?」 
俺「…おう…」 

ようやく、忘れかけてたというのに、Y、なんなんだよ…。
『付き合ってくれ』だって…?…ワケが…わからないよ…。 

妹「Nちゃん、アイスたべよーよ」 
N「あ、食べる食べるーw…ほれ、アンタもお風呂入ってきちゃいなよ」 
俺「…ん…ああ」 

熱い湯船に浸かってみても、少しもさっぱりしなかった。 

…その頃になると、俺がこれまでYに対して抱いていた罪悪感は、
そっくりそのまま恐怖へと形を変えていた。 


引用元:PINKちゃんねる
http://sakura01.bbspink.com/test/read.cgi/hneta/1150794129/ 




完全にストーカー化してしまいましたね・・・。
どう決着がつくのでしょうか?